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館長コラム

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2024年5月の館長コラム

2024年5月1日

自然から学ぶ、生物模倣の技術

トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。

5月に入り、新緑の季節を迎えました。日本では古来より自然とともに生きる暮らしが受け継がれてきましたが、自然界の巧みなメカニズムやシステムを学び、現代の技術として活用する考え方が「生物模倣(バイオミメティクス)」です。

例えば、500系新幹線の先端デザインは、カワセミの鋭い流線型のくちばしにヒントを得た形状ですし、そのパンタグラフ(集電装置)の低騒音走行技術は、闇夜を音もなく飛び回るフクロウの、羽にあるセレーション(鋸歯状の羽毛)の構造を応用したものです。

トヨタグループが主要な拠点を構える愛知県では、多くの企業や団体が里山の保全に取り組み、フクロウやムササビなど生物多様性に資する森づくりが熱心に進められています。自然と技術は対立するものではなく、ともに持続可能な社会づくりに貢献するものでしょう。青葉繁る中で、自然からの学びに思いを馳せたいと思います。

【参考資料】
石田秀輝・下村政嗣『自然にまなぶ!ネイチャー・テクノロジー』学研パブリッシング、2011年
トヨタの森ウェブサイト https://toyotanomori.gazoo.com/posts/15477653

巣立ち直後のフクロウの幼鳥(愛知県豊田市、2016年6月撮影)

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